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ユニコーン企業のひみつを読んだ

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ユニコーン企業のひみつ ―Spotify で学んだソフトウェアづくりと働き方

前書き

ユニコーンである Spotify の開発がどのように行われているのか、組織構成からチームでの意識まで幅広く書かれている。私自身、スタートアップに身を置いており、共感できる点や改善すべき点が多く見つかった。このブログでは、そんな中で印象に残った言葉について書いていく。

印象に残った言葉集


成功とはもはや計画に従うことじゃない。プロダクト開発における成功とは「発見と学習」だ。

本書の序盤の「チームが世界を眺めるレンズを変える」の話の後に、このように書かれている。受託企業のようなリリースして or 納品してそれで成功と見なすのではなく、プロダクトを素早くリリースし何度も改善を繰り返してリリースを行うのが成功と定義している。計画通りであることが評価されるエンタープライズ企業とスタートアッっぷでは多くのことが違う。どちらが優れているというよりは解く問題が違う。


スタートアップは「学習する機械」だ。テック企業はプロジェクトで仕事を進めない。ミッションで進める。

プロジェクトに対しての批判とどうやって仕事を進めれば良いかについて書かれた章の一文である(2 章ミッションで目的を与える)プロジェクトに従うエンジニアを野菜切り係という中々な絵で表しているが、思い当たる節はあるエンジニアはいるのではないか。すでに決まっている計画を淡々とこなすという、ある意味ひたすら刻む野菜切りがかりに通じるものは私も感じたことがある。こうした感情をプロジェクトでは生み出してしまうそうだ。

さらにプロジェクトでは「計画」が設定されており、寄り道は許されず、メンバーの考える力を奪ってしまうとも書かれている。そうして野菜切りがかりになる...。

では、プロジェクトではなく何にフォーカスすれば良いのかというと「ミッション」であるとのこと。


Spotify ではこんなミッションがあった。

  • 新しい音楽を簡単に見つけられるようにする
  • リビングルームを制する
  • 朝の通勤のお供になる

ミッションとはチームに与えられる抽象度の高い目標で、チームの方向づけの意味も含まれている。この Spotify のミッションは純粋にかっこいいと思った。「制する」というのはまさに抽象度の高い表現だが、何かやる気が出るような印象がある。実際に本でも、「もっと大きく出よう」とあり、上っ面や平凡な内容ではなく、会社の中核をなすようなものがよいとのことだ。

このミッションをもとにチームが自立的に動くというのが本書でのテック企業の強いチームの位置付けとなる。そしてチームをスクワッドと Spotify では読んでいるそうだ。 スクワッドの他にもトライブやチャプター、ギルドという組織の概念があるが詳しくはSpotify Engineering Cultureに載っているのでそちらを参照願いたい。


人は好きなことに取り組んでいるときこそ最高の仕事をする

Spotify では組織改編などで異動があるときに、メンバーに自分で自分の所属を選ばせているとのこと。ただその方法はホールの一角にホワイトボードを並べてメンバーが自分で所属を書いていくという方法。従業員が自分でチームを選ぶことにより、自己組織化につながるのが目的だ。また、気の合う人と好きな仕事をすると転職率も下がるよね、という話もある。

好きこそ物の上手なれとも言うが、ここまでチームの自己組織化に対して貪欲に取り組むのは凄いと思った。確かに自分でミッションを見て選んだスクワッドなら、やる気にもなるし、楽しく仕事に取り組む人は多いだろう。


他にも良い箇所は多くあったが、一旦ここまでで...。 チームに権限を持たせて自己組織化されたチームを作り、最高のチームを擁する企業が勝つと言う方針がこの本の主軸と感じた。スクワッドという手法は時々聞いていたが、実際の組織図などを見たのは初めてて新鮮だった。カンパニーベット(全社横断レベルでの取り組みが必要なもの)とスクワッドの共存方法なども載っており、そこまで分厚くなく読みやすく、良い本だった。